読書ノート「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」

基本情報

  • 著者:高松 平蔵(ドイツ在住ジャーナリスト)
  • 出版社:学芸出版社
  • 出版日:2016年9月5日
  • 読了日:2018年7月11日

概要

ドイツ在住のジャーナリストである筆者が住むドイツ南部の地方都市「エランゲン」。人口約10万人のこの都市は、同じドイツのベルリンやフランクフルトよりも都市ランキング調査で上位に位置し、一人あたりのGDPでもドイツの平均の2倍となっている。

17世紀、帽子、手袋製造業などで栄えた後、19世紀末、市場変化からそれらの工場が閉鎖されると、18社のビール工場を擁する「ビール・シティ」へ。その後、「ハイテク都市」、「環境都市」へと、400年の間、アップデート(発展)を続け「最新の都市」であり続ける「エランゲン」。筆者は都市の発展には、広い意味での「クリエイティビティ」が必要であり、それは、「次のビジョンを描き、それを実行する戦略と勇気」と定義している。

本書では、ドイツの地方都市「エランゲン」を例に、都市の発展に必要な「クリエイティビティ」を生むための都市の仕組みが解説されている。

印象に残った言葉や表現

インフォテインメント

2年に一度開催される「科学の夜長」というオープンドア・イベント」さまざまな企業・組織や施設が施設を解放して活動内容を紹介するイベント。市民が科学技術を体験したり、軽い飲食ができるよう主催者が趣向を凝らしている。

行政や地元の銀行・企業から資金提供を受けて開催されており、約3万人が参加する「地域資源を可視化する」インフォテインメントになっている。

滞在を楽しむための道路

エランゲンの中心市街地のメインストリートの歩行者ゾーンは550メートル。この道路に毎週最低1回は行く人が約41%いる。

移動の利便性や単なるモノを消費する場所ではなく、そこで過ごしたくなる快適さを考慮して歩行者ゾーンが作られている。

まちの新聞は言論の公共空間

ドイツは、新聞の発行部数の7割が地方紙と、メディアもローカル志向が強い。読者欄が一般記事と同じぐらい紙面が割かれており、記事への意見表明や地元で起こっている問題の提起などが掲載されるなど、地元の新聞に、地元の住民が、地元について公の言葉で語っている。新聞がまちの「言論空間」の役割を果たしている。

まちの自意識

筆者がドイツで取材をしていて感じる日本との圧倒的な違いは「歴史への執念」。まちが歴史アーカイブを持っていて、文書や歴史的に重要なものが蓄積されている。SNS(Facebook)で昔の写真を投稿するグループがあり盛り上がっている。ドイツの市街地は昔の建物が残っており、投稿される昔の写真に現存する建物があるため、当時の街がリアルに想像できる。

まち中を劇場化して、飲食をしながら、まちなかを周り、歴史にまつわる劇を鑑賞するイベントも実施されている。

ドイツでは「郷土愛」「郷土保護」という言葉が概念化されている。まちの人々が自分のまちに愛着や誇りを感じており「まちの自意識」が育まれ、まちの質を高める土壌となっている。

感想

都市間の競争が激しい地方分権型社会、フェラインといわれるNPOの充実、個人間が並列の関係で互いに補完し合う「連帯」という考え方など、ドイツと日本では素地が違うため、本書に挙げられているドイツの例を日本にそのまま持ってくることは難しい。

しかし、自分のまちの歴史を知り、自分のまちの理想や課題など語り合う場や機会をたくさん設けることで、市民の「郷土愛」「郷土保護」の心を長い時間をかけて育むこと。そうして、まちの発展のための素地をじっくり作り上げ、施策は時代に即したものを次々に打ち出していくことが重要であることを本書で学んだ。

目次

  • はじめに ─400年間「最新」であり続けるまち
  • 1章 ドイツのまちの捉え方
  • 2章 クリエイティビティのエンジン
  • 3章 コンパクトシティのアクティビティ
  • 4章 まちと成長する企業の戦略
  • 5章 コミュニティをしなやかにつなぐインフラ
  • 6章 パブリックマインドが生まれるしくみ
  • 7章 まちを誇るメンタリティ
  • 8章 競いあい磨かれる、まちの価値
  • おわりに―お喋りな都市に宿る創造性

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