読書ノート「失敗からひも解く シティプロモーション なにが「成否」をわけたのか」

基本情報

-著者:河井 孝仁(東海大学文学部広報メディア学科教授)

-出版社:第一法規

-出版日:2017年10月15日

-読了日:2018年9月20日

概要

現在、多くの自治体が「地方創生」の手段の一つとして「シティプロモーション」に取り組んでおり、その中には、シティプロモーションに取り組む専門の部署をつくっているところもある。

しかし、少なくない人はシティプロモーションとはイベントをするのか、キャッチフレーズをつくるのか?など何をしているのか分かっていない。さらに、シティプロモーションをしている行政自身が何をすればいいのか、分からないこともある。

本書では、静岡県富士市、栃木県那須塩原市、岩手県北上市など多くの自治体のシティプロモーションに関わってきた筆者が、それら自治体の事例を挙げながら、シティプロモーションとは何か、何すればいいのか、シティプロモーションにおける成功・失敗とは何か、成功するための戦略構築の考え方などを紹介している。

印象に残った言葉や表現

シティプロモーションは「担い手」をつくる

少子高齢化により都市が消滅するのは、単に人口という頭数が減ることが原因ではなく、まちをよくしようという想いや意欲を持った「担い手」がいなくなるから。シティプロモーションの目的は、まちの魅力を様々に示し、人々のまちへの誇り、共感を生み出し、まちの「担い手」をつくる。そのまちの担い手によって生まれる、熱を持ったしなやかな土台を基礎として、まちは人々の持続的な幸せを実現できる。

地域参画総量

まちに住む人たちの地域推奨意欲、地域参加意欲、地域感謝意欲、加えて、まち外からのまちに共感する人たちの地域推奨意欲、これら4つの意欲をを全て加えたものを「地域参画総量」という。シティプロモーションによって、地域参画総量を増加させることができれば、定住促進、商店街振興、交流人口拡大などの具体の取り組みにとっての、熱を持ったしなやかな土台になる。

仕事をしないことが仕事をすること

シティプロモーション部局が自分の守備範囲を広げ過ぎると疲労困憊してしまう。シティプロモーション部局が直接的にできるのは、地域参画総量を高めることだけ。商店街整備、空き家活用、企業誘致、宅地開発などの仕事は、定住人口・交流人口の拡大につながるがシティプロモーション部局がやる仕事ではない。シティプロモーション部局は、それらの仕事によって4つの意欲(地域参画総量)がどのように向上したかを気に留める。そして、十分な向上があれば、組織にそれを伝え褒め称える。さらにどうして向上できたのかを学び、他の組織に伝える。

キャッチフレーズとブランドメッセージとロゴマークの違い

「キャッチフレーズ」と「ロゴマーク」を広めることがシティプロモーションではない。キャッチフレーズは知ってもらうための言葉。「このまちは、どんな人が、どんな風に暮らすのが「しっくり」くるの?」という、まちの「空気」「雰囲気」を明らかにして共感を獲得するための「ブランドメッセージ」が最も重要。ロゴマークは、キャッチフレーズやブランドメッセージを強化するためのもの。

何ができないかという「穴」を見せる

役所だけでシティプロモーションをこなうと息切れしてしまう。まちの人々やNPO、会社が自分の問題だと思って参画することが重要。そのために必要なのは「穴」。役所は何ができないかという「穴」を見せ、まちの人々やNPO、会社の力をその穴に誘い込み、まちの人たちがその穴を埋めようと活躍することで、自分はまちにとって意味のある存在だと思えること。それが、まちの担い手を育てることにつながる。

地域魅力想像サイクル

シティプロモーションにおいて、まちの魅力を語れるようにするためには「地域魅力想像サイクル」が必要。まちの魅力を発散し、発散したまちの魅力を共有し、共有したまちの魅力を編集して「誰に共感されるまちなのか」というブランドを明らかにする。ブランドを基礎に、様々な取り組みを磨き上げ、磨き上げた取り組みを魅力として再び発散する。つまり「発散→共有→編集→研磨→(再)発散」のサイクル。

このサイクルを回すためには、行政と、まちに住む人たち、NPO、会社、まちの外の人たちの力との共創、協働による「共創エンジン」が必要。共創エンジンを回すには、それらの人たちが取り組みに参加するだけではなく、徐々に当事者化してくことが重要。

ビックピクチャとスモールピクチャ

筆者がアメリカポートランドを訪れた際に行政担当者が語った言葉。シティプロモーションを実現するためには、まちをどのような姿にするのかという絵、「ビックピクチャ」を持たなければならない。ブランドメッセージを用いて、このビックピクチャを明らかにする。「スモールピクチャ」とは、まちに関わる人たちの個々の想い(個人の絵)。ビックピクチャとスモールピクチャ、ブランドメッセージと個人の暮らし、まちの今後の可能性と一人一人の生活をつなぐために、シティプロモーションは「物語」を大事にしなければならない。まちの日常、人々の物語を編み上げて、ビックピクチャを描くという意識が重要。

感想

タイトルに「失敗からひも解く」とあるが、本書で紹介されている具体の事例は、筆者がシティプロモーションに実際に関わった自治体のもののようで、そのせいか明確に失敗と断じてはいない。筆者の立場上、仕方ない部分ではあるが、もっと失敗事例について、その原因と改善点を記載して欲しかった。それを差し引いても、シティプロモーションについての基礎的な考え方、やるべきこと、やってはいけないことが分かりやすく書かれている。シティプロモーションに関わる方には、是非一読してみることをおすすめしたい。

目次

  • 第1 章 これまでのシティプロモーションのあり方と限界
  • 1.シティプロモーションとは何だろう
  • 2.シティプロモーションはもう疲労困憊なのか
  •  column 成果指標
  • 第2 章 シティプロモーションが「失敗」する
  • 1.シティプロモーションにおいての「成功」とは?
  • 2.少子高齢化は悲劇なのか
  • column フューチャーセンター
  • 3.キャッチフレーズをつくることがシティプロモーションなのか
  •  column ペルソナ
  • 4.シティプロモーションにおけるターゲティングって何だろう
  •  column ターゲティング
  • 5.「仲よくやりましょう」だけでは成功は難しい
  • 6.「とにかく知ってもらわなくちゃ」だけでは成果は上がらない
  •  column ダイバーシティ
  • 7.市民参加は大事ですという「失敗」
  • 第3 章 この戦略なら成功する
  • 1.戦略は明文化するといい
  • 2.目的を設定する
  • 3.現状分析をして結果を示す
  • 4.目的達成のための具体的施策を考える
  • 5.推進するための体制は
  • 6.評価をしなければ戦略ではない
  • 7.那須塩原市シティプロモーション指針は見本に使える
  • 第4 章 国の外から見えるもの
  • 1.ポートランド
  • 2.ニューカッスル・アポン・タインとゲーツヘッド
  • 3.私たちが学ぶものは何か

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