読書ノート「先生、脳のなかで自然が叫んでいます!」

基本情報

  • 著者:小林 朋道(鳥取環境大学教授)
  • 出版社:築地書館
  • 出版日:2018年9月7日
  • 読了日:2018年11月21日

概要

「生き物の脳は、それぞれの種本来の生息地での生存・繁殖がうまくいくように組み立てられているはず。」という動物行動学における原理がある。では、ヒト本来の生活とはなにか。筆者は、それは狩猟生活だという。ホモ・サピエンス(ヒト)が誕生して約20万年。ヒトはその9割を狩猟をして生きてきた。。ヒトは、狩猟生活の中で、ほかの生物の習性・生態に敏感で、生物の習性・生態に関心を示し記憶にとどめるという特性を持つに至った。
「先生、巨大コウモリが廊下を飛んでいます!」をはじめとする「先生!シリーズ」の筆者が、動物行動学の視点から「ヒトの精神と自然とのつながり」について、明らかにしていく。

印象に残った言葉や表現

擬人化が野生動物の生存を守る心につながる

生物の気持ちになって考える(擬人化する)ことで、その習性・生態を理解する助けになる。生物を擬人化するという能力は、自然とふれあい、生き物についての豊富な知識を得ることで獲得できる。そして、生物との接触体験が豊富であるほど、自然環境保全意識も高い。

脳には生物の認識に専用に働く領域がある

脳の側頭葉には、生物を認識し、それらの習性を推察したり記憶したりする専用の領域(生物認知専用領域)がある。3歳の幼児に対する実験では、生物の毛を刈ったり、耳やしっぽを失ったイヌもイヌだと認識できたのに対し、テーブルを加工してベッドのようにしたら、テーブルがベッドになったと言う言葉を受け入れた。生物認知専用領域を健康に発達させるためには、五感を通して生物との持続的なふれあいが必要である。

ポケモンGOはなぜ人気があるのか

ポケモンGOのなかには、「推察(考えて)探し」、「見つけて捕まえ」、「習性についてより理解を増す」といった狩猟採集活動の要素が入っている。子ども達がポケモンGOに夢中になるのも、ヒトの狩猟採集活動のなかで発達した脳の生物認知専用領域が刺激されるから。

旭山動物園が人気の理由

われわれホモ・サピエンスという動物がもつ習性の一つは、ほかの生物の習性・生態に敏感で、ほかの生物の習性・生態に特に関心を示し記憶にとどめるという特性。北海道の旭山動物園が人気があるのは、ヒトの脳が生物の生態に興味を感じるようにできているから。動物園や水族館が、動物本来の習性・生態をよく見せてくれる場所になると、魅力が急上昇する。

感想

本書は「先生!シリーズ」の番外編として書かれているが、「先生!シリーズ」を読んだことのない私は、この本で初めて筆者の小林先生の著作に触れた。動物行動学の本と聞くと専門用語がいっぱいの堅苦しい本と追われそうだが、ユニークなタイトルどおり、読みやすくて文章が面白い。一気に一日で読み終えてしまった。
この本での筆者の主張は一つ。ヒトの精神の基本構造は自然の中での狩猟採集生活に適応しており、子供の頃から自然とたくさん触れ合うことでヒト本来の成長が図られるということ。
この主張について、様々な実験や実体験を通して明らかにしている。筆者が例に出している通り子供のころは虫で残酷な遊びをしたりするが、それも生物の生態や習性を学習することで
精神を成長させる貴重な体験なのかもしれない。

目次

  • はじめに
  • 第1章 もし、あなたがアカネズミだったなら?
    「擬人化」はヒトと自然の精神的なつながりを醸しだす
  • 第2章 ノウサギの“太腿つき脚”は生物か無生物か
    子どものころの生物とのふれあいが脳に与える影響
  • 第3章 幼いホモ・サピエンスはなぜダンゴムシをもてあそぶのか
    脳には生物の認識に専門に働く領域がある!
  • 第4章 ポケモンGOはなぜ人気があるのか
    推察する、探す、採集する、育てる、自慢する………狩猟採集生活がそこにある!?
  • 第5章 狩猟採集民としての能力と学習の深い関係
    ヒトの脳は、生物の「習性・生態」に特に敏感に反応する
  • 第6章 古民家にヤギやカエルとふれあえる里山動物博物館をつくりませんか?
    ヒトの心身と自然と文化の切っても切れないつながり

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)