読書ノート「新・生産性立国論」

基本情報

  • 著者:デービット・アトキンソン(小西美術工藝社代表取締役)
  • 出版社:東洋経済新報社
  • 出版日:2018年3月8日
  • 読了日:2018年12月22日

概要

「日本や日本企業は特異だから」「日本的経営や日本型資本主義が経済発展の秘密だ」といった幻想を捨て、客観的に事実を直視し、生産性を上げれば日本経済は甦る。世界に類を見ないペースの人口減少を迎える日本において、生産性を上げるにはどうすればよいのか、そもそも生産性とは何か。「新・観光立国論」の著者であるデービッド・アトキンソンが、生産性向上のための超具体的方法を初公開。

印象に残った言葉や表現

日本が経済大国なのは「人口大国」だから

日本人が勤勉であることや、高い技術力があることは、先進国になるための必須条件なのであって当たり前。日本が世界第3位の経済大国になっている主な要因は1億2千万人という人口の多さ。人口が1億人を超えている国は、世界に13か国しかない。さらに先進国の中で1億人以上の人口がいるのは、米国と日本だけ。日本の経済成長は、高い技術力と人口増加により成し遂げられたのであって、日本と日本企業の特異性、日本型資本主義は、本来達成させるはずだった経済成長にマイナスに作用し、その後、人口増加が止まったために、表面化してきた。

経済規模を維持しないと「親を見殺しにする国」になる

人口減少に伴いGDPが縮小すると、GDPに占める医療、介護、年金などにかかる社会保障費が増加する。日本は、これから人口が減るが高齢者の数はあまり減らない。1人当たりの生産性を上げGDPの額を増加させ、経済規模を維持しないと、人々の命にかかわる医療費までも削減しなくてはいけなくなる。

生産性=1人当たりのGDP

GDPとは一定期間内に国内で生み出された付加価値の総額。具体的には「労働者の給料」「企業の利益」「政府などが受け取る税金」「お金を貸した人が受け取る利息など」の総額。GDPの総額を国民の数で割ったものが生産性。

労働者1人当たりの生産性は、日本はスペインやイタリアよりも低くなる

人口1人当たりのGDPは、日本や世界の中で第28位。労働者1人当たりのGDPでは、日本は世界で第29位。イタリアは第19位、スペインは第25位。日本の生産性の低さは尋常ではなく、労働者の仕事のやり方に問題があるのは明らか。

増やすべきは「利益」ではなく「付加価値」

利益と付加価値(GDP)は同じではない。利益は付加価値の一部にすぎない。バブル崩壊後、1990年代からこれまでは、従業員の給料を下げて、内部留保金を増やし、付加価値を増やしてこなかった。25年間、ただ単に付加価値の取り分を労働者から企業へ入れ替えし、企業の利益を増やしてきただけ。付加価値の総額を増やしていかなければならない。そのためには、人口減少が進む中では、1人当たりの生産性を上げるしかない。

高品質・低価格は「人口増社会」でしか通用しない

「高品質・低価格」を日本の美徳ととらえる考え方は、人口が大きく増えている時代に通用するもの。高い技術や長時間労働によって生み出した高品質なものを低価格で提供すれば労働者の所得が低くなる。消費者の数が減っている国内で、以前と同じ商品を同じようにつくっているにもかかわらず、イノベーションもせずに価格だけを下げさせ、自国民同士で所得の下げ合いをしている。日本の商品は、高品質かもしれないが、高付加価値でないところに問題がある。今の日本に求められているのは「高品質・相応価格」である。

女性活用のために廃止すべき3つの制度

日本の現在のGDPの総額のうち、71%を男性が生み出している。生産性を上げるためには、女性の活躍が必要。働かない女性は大変な機会損失を生み出す存在。子供の数に応じた手当を徹底させる代わりに、配偶者控除、第3号被保険者制度、遺族年金制度の3つの制度を廃止するべき。女性だろうが男性だろうが、結婚していようがいまいが、年金・医療の負担はだれかを優遇することなく、平等に個人負担にするべきである。

「中小企業が好き」意識を改革せよ

国は企業に対して、徹底的に生産性の向上を求めるべき。それは、利益の追求ではなく、付加価値を向上させること。日本の生産性悪化の一番の原因が中小企業であり、中小企業が一番、生産性を向上させないといけない。しかし、政府が「守るべきでない企業」も守ってしまうため、本来、自然に減る生産性の低い企業が残ってしまっている。今、政府は「事業承継」ではなく「統合・廃業」を促進するべき。

今の最低賃金は「日本人労働者をバカにしている」水準

女性活躍のほか、最低賃金も生産性と強い相関関係を持っている。日本の最低賃金は、同じように生産性が低いスペインと変わらない。さらに、日本の最低賃金は、2018年1月には韓国を下回っている。政府は企業を優先しすぎるあまり、国民をバカにしていると言っても過言ではない。

感想

見出しの1つだけを切り取ると過激な表現もあるが、内容を読むと政府、企業、労働者のどれ寄りでもなく、フラットな視点で書かれている。日本経済の再生のためには、生産性の向上が必要であり、そのためには、女性の活躍、高付加価値の商品開発が必要など耳慣れた言葉が並ぶが、美辞麗句を並べただけでなく、元アナリストの著者らしく、客観的なデータをもとにして書かれている点で納得して読むことができた。

目次

  • 第1章 人口減少は「生産性」向上でしか補えない
  • 第2章 「生産性」を正しく理解し、目標を立てよう
  • 第3章 「高品質・低価格」という妄想が日本を滅ぼす:改革のポイント1
  • 第4章 「女性」をどうにかしないと生産性は上がらない:改革のポイント2
  • 第5章 奇跡的に「無能」な日本の経営者たち:改革のポイント3
  • 第6章 国がとるべき「3つの生産性向上策」
  • 第7章 企業が生産性を上げるための「5つのドライバー」と「12のステップ」

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