読書ノート「地域が稼ぐ観光」

基本情報

-著者:大羽 昭仁(ソーシャルビジネスプロデューサー)

-出版社:株式会社 宣伝会議

-出版日:2018年10月10日

-読了日:2019年1月12日

概要

観光は消費の成熟した国々にとって成長産業であり、地域の資源を活かせる貴重な産業である。筆者は、前職の広告会社で培ったアプローチを用い、観光の在り方をゼロから考え、再構築し、地域に若者や担い手が定着できるよう「地域が稼ぐ観光」を作るを目指している。本書では、これまで筆者が取り組んだ「地域が稼ぐ観光」についての事例紹介を通して、単なる名所巡りの観光から、さまざまなライフスタイルのコミュニティをターゲットとした「観光プログラム」の構築方法を説明している。

印象に残った言葉や表現

露出目的の観光PRからの脱脚

地域の人々からよく聞く「この地域を知ってもらえれば」という話。「知ってもらえれば」は、莫大な投資が必要となり極めてハードルが高い。ネットが進化した現代では、生活者が情報を消化できず、露出があったとしても、認知され、記憶される可能性は限りなく低くなっている。露出目的のプロモーションにお金を使うよりも、どんな観光体験ができるかを伝える観光体験プログラムの魅力化を重視し、生活者がネットで比較検討できるようにすることが重要である。

「人数から金額」へものさしを変える

「地域が稼ぐ観光」を実現するためには、観光プロモーションの評価を人数という単位から、金額という単位へ変えることが不可欠。それに伴い「イベント的な集客から日常的な集客へ」「観光客観光消費額へ」「単年度から長期的へ」と様々な要素が変わってくる。地域へお金が落ちるしくみを構築し「観光地経営」「地域経営」といった経営的な視点が必要である。

マスメディアからネットメディアへ

マスメディアを活用した観光プロモーションは莫大な予算が必要。生活者は、ネットで観光商品を比較検討するようになり、単なる情報提供では行動に移してもらうのが難しい。ネットリテラシーがある人たちは、価格とサービスを比較検討する。どのような観光ができるかという具体的なプランと実際に満足したというお客様の声があれば、ネットを通じて拡散されることが期待できる。

トライブマーケティング

ネットやSNSの普及により同じ価値観を持つ人たちが繋がり、ゆるいコミュニティ「トライブ」が形成されており、多様なライフスタイルのコミュニティが混在する時代となっている。生活者は、自分のライフスタイルの具現化の場として、旅を考え始めている。コミュニティ(トライブ)ごとに地域価値を創造し、ライフスタイルごと引き寄せる観光マーケティングにおいて、「トライブマーケティング」の考え方は有効な手段となる可能性がある。

人に伝えたくなる観光体験プログラム

SNS、スマホが普及した情報過剰なネット社会では、露出したところで情報の渦に沈むだけ。同じライフスタイルの人に伝えたくなる観光プログラムづくりこそが情報発信の鍵となる。そのためには、お客様に、ストーリー性のある観光プログラムを提案し、それを体験してもらい、自分のまわりのコミュニティに拡散してもらう。

外部のモチベーション✖️地域資源で価値を見つける

「地域が稼ぐ観光」のプランニングには、地元の人たちのほかに、地域外のターゲットとなる生活者をよく知っている「よそもの」と言われる地域外の人が必要。また、ターゲットとなる一般生活者も参加すればベスト。

食の技術は首都圏から

食は、観光プログラムの要素として重要なポイントとなる。日本の地域の多くは、食材には恵まれているが、食の技術には恵まれていない。食の技術に関しては、東京を中心とした首都圏で切磋琢磨されているのが現実。

行政が変えるべきこと

行政は、提供するサービスのクオリティと見込める収入、それにかかる人件費やコストという経営的考え方がないため、意見が食い違うことがある。また、単年度予算であるため、複数年で長期的に考える習慣がついていない。そして、前例踏襲と先行事例に見習うため、自分の地域を差別化できる価値が見つからない。まわりと同じようなことをすると、大多数の中に埋もれてしまう。

感想

マスメディアからネットメディアへ、画一的なサービス提供から生活者のライフスタイルに対応したサービス(体験)の提供など、本書のテーマである観光に限らず、さまざまなサービスを考える上で、重要な視点だと思う。行政において人件費についての考え方がないのは、人件費の予算は事業実施部署とは別の部署が予算化するから。事業実施部署が人件費予算も考える仕組みにすれば、事業量と必要な人の頭数がちゃんとリンクすると思うが、人員適正化と人事がからむため、なかなか難しい。

目次

  • はじめに
  •  「地域が稼ぐ観光」への想い
  •  なぜ「地域が稼ぐ観光」なのか
  •  僕の「地域×観光」の始まり
  •  第1回のカルトラでの学び
  •  「Team 未来づくり」の強み
  • 第1章 課題先進国日本と稼ぐ観光
  •  日本は課題先進国?
  •  課題先進国と地方創生の関係
  •  地域が稼ぐ事業としての観光
  •  コト消費の代表が観光
  •  求められている「地域が稼ぐ観光」
  •  レジャースポーツの衰退
  •  露出目的の観光PRからの脱却
  •  「人数から金額」へものさしを変える
  • 第2章 インターネット社会と観光
  •  マスメディアからネットメディアへ
  •  みんなが情報発信できる時代
  •  同じ価値観を持つ人同士が繫がる時代
  •  スマホ所有と観光行動の変化
  •  観光の内容は、物見遊山から体験型へ
  •  人に伝えたくなる観光体験をつくる
  •  観光体験のプログラム化の必要性
  •  ネット時代の情報発信
  • 第3章 「地域が稼ぐ観光」のつくりかた
  •  地域が観光で稼げなくなった
  •  外部のモチベーション×地域資源で価値を見つける
  •  旅・レジャーのモチベーション
  •  新価値を具現化する観光体験プログラム
  •  稼ぐ観光を可能にする調査
  •  事業計画とPDCAサイクル
  •  運営会社の確保
  •  行政のしくみと「地域が稼ぐ観光」
  •  観光のその先へ
  • 第4章 カルトラ
  •  初めての観光体験プログラム「カルトラ」
  •  作家と一緒につくる「カルトラ」
  •  山口晃さんとの「カルトラ」
  •  「カルトラ」から文化庁、日本遺産へ
  • 第5章 かすみがうら未来づくりカンパニー
  •  「かすみがうらライドクエスト」が生まれた背景
  •  サイクリングの現状と事業の難しさ
  •  ライドクエストのつくり方〜ワークショップ
  •  ライドクエストのつくり方〜需要調査
  •  プログラム運営会社の設立
  •  「かすみがうら未来づくりカンパニー」の事業
  •  コンセプト発想の商品開発と販売
  •  「かすみがうら未来づくりカンパニー」の未来
  • 第6章 信州未来づくりカンパニー
  •  ウィンタースポーツの現状
  •  過疎化の進む乗鞍
  •  さまざまな偶然が重なる
  •  「信州未来づくりカンパニー」の設立
  •  自然を尊ぶ、自然に癒される
  •  地域の人たちと共につくるレストラン
  •  のりくら 雪と氷のEV Snack
  •  「信州未来づくりカンパニー」の未来
  • 第7章 観光体験プログラムのヒント
  •  ASOBO JAPANとの出会い
  •  村上海賊(愛媛県今治市)
  •  縄文レストラン(新潟県十日町市)
  •  柏島で魚を知る(高知県大月町)
  •  家族で子供と楽しむ
  • おわりに 「地域が稼ぐ観光」実現に向けて
  •  7年間を振り返る
  •  「地域が稼ぐ観光」の実現メモ

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